「パリ協定」を簡単におさらい

2019年11月4日、アメリカのトランプ大統領が正式にパリ協定から脱退することを国連に通告し、世間を賑わせ、同時に米国内外から多くの批判を招いている。
アメリカは世界で中国に継ぐ第二位のCO2排出国であり、世界の排出量全体の15%を占めていた。

また、パリ協定に批准している途上国の今後の対応は先進国が開発している新技術と資金援助に依存している部分も色濃いため、アメリカの脱退はこの史上初となった法的効力を持つ国際ルールの意味を根底から考え直させるとの声もある。
一方、世界の市場原理はすでに自然保護や地球環境問題への対応を前提とする方向に進んでおり、アメリカのパリ協定からの脱退は実質あまり世界的な取り組みに大きな影響は与えないだろうという専門家の声もある。
しかしいずれにせよ、途上国も先進国共に共通する課題に一緒に取り組もうとしている中、まだまだ絶大な影響力を持つアメリカが手を引くことに落胆した人も多かったに違いない。

では、パリ協定とは何なのか、そしてそれがなぜ大事なのか、そのポイントとなるのはどこなのかを今日は読者の方と簡単におさらいしたい。



「パリ協定」ってなに?

簡単にパリ協定について整理しておく。パリ協定とは、以下のことを指す。

パリ協定【Paris Agreement】は、「2015年11月30日から翌月の13日までフランス・パリで行われた国連気候変動枠組条約第12回締約国会議(Conference of Parties :COP21)で採択され、2016年11月4日に発効された気候変動に関する国際条約」。159の国と地域が批准し、世界の温室効果ガスの約86%をカバーしている(2017年現在)。
原本日本語版


パリ協定で定められている要点は、以下の数値目標になる。

1. 世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をする。
2. 気温の上昇の原因となる温室効果ガス(二酸化炭素やメタン、亜酸化窒素等)の排出を今世紀後半に実質ゼロまで下げる。

このようにパリ協定では、
平均気温に対する目標と、その主な原因と考えられている温室効果ガス排出量削減目標の2種類があった。
そして各国この目標を達成するためにそれぞれ目標を定め、政策を考え履行するよう規定されている。



なぜ「パリ協定」が特別なのか

先進国と途上国両者に対して法的効力を持った初めての枠組みであること

パリ協定の前進にあたる1997年に合意され、2005年に発効された「京都議定書」では、先進国に対してのみ削減義務が課されていたが、このパリ協定では途上国に対しても2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定め、また、長期的な「低排出発展戦略」を作成して国連に提出することが義務となっている。

京都議定書では、温暖化の原因は先進国にあるため、その対策は先進国が取るべきという、先進国責任論を重視しており、それに不平等と感じたアメリカやカナダなどは離脱することとなった。
だが、パリ協定では中国やインドなど主要途上国も加わった
それだけ温暖化の対策は、世界が利害を超えて手を取り合って取り組む必要があるという、強い危機感を共有した課題になっていると言えるのではないだろうか。
だが、それでも条約の中では、各国の抱える事情の違いに考慮し、先進国こそが経済の面や温室効果ガス排出量削減目標を掲げて、世界をリードすべきとし、開発途上国への資金提供や技術開発の支援をするよう規定している。

しかし、中国やインドに批准を働きかけたアメリカ(当時オバマ大統領)当国が、離脱してしまった。
この点については日本政府にももっと強く糾弾してもらいたかった。

各国は5年ごとに目標を更新する

各国は、すでに国連に提出している2025年-2030年に向けての排出削減目標を含め、2020年以降、5年毎に目標を見直し、更新して提出しなければならない。その際は原則として、それまでの目標よりも高い目標を掲げることとされている。
このように、各国は報告義務があり常に国連や加盟国からチェックを受けることになり、それが強制力として各国の対策を後押しする狙いがある。

ちなみに、日本も既に2030年までの目標を掲げている。
日本の場合、14億1000万トン(CO2換算)という過去最高の排出量を記録した2013年と比較して26%の削減としている。環境省の積算によると、2017年には既に8.4%の削減が達成されているので、残り20%弱が求められている。

また、パリ協定では目標を達成できなくても罰則は設けないとしているのも重要なポイントだろう。


まとめ

パリ協定で定められた数値目標2種類(気温上昇と温室効果ガス排出量)をおさらいした上で、この新たな枠組みが①初めて途上国と先進国を対象にしていること、そして②各国に5年毎の目標の見直しと更新を義務付けていることを確認した。

これから「パリ協定」を耳にしたらまず上記のポイントを思い出して考えてみよう。

※参考にしたページ
環境省
経産省資源エネルギー庁

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